一般社団法人盛岡青年会議所

理事長所信

2019年度理事長 伊藤 淳之介

想像より世界は広く複雑である
世界を構成する要素である個性あるまち
そのまちは多様なひとで形づくられている

 

もりおかの未来は
住み暮らす私たちに委ねられている

自らのまちは自らが創る

 

今、私が願うのは
私たちの決意 、選択 、行動が
その笑顔の理由となること

 私たちはVUCAと呼ばれる時代に生きている。多くの要素、要因が絡み合い、変動性(Volatility)と不確実性(Uncertainty)に翻弄され、複雑性(Complexity)と曖昧性(Ambiguity)によって予測不能な時代である。経験則だけでは対応できない自然災害や気候変動により生活が一変し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通した個からの強い発信に社会が揺れ動く。グローバリズムに突き進んでいたはずの世界でイギリス国民はEU離脱を決め、米中間で貿易戦争が勃発するなどこれまで予測しなかったことが短期間に起こっている。新興企業が多様なビジネスチャンスを生かし世界を席巻する一方、歴史ある大企業であっても環境の変化に対応できなければ没落の危機に瀕する。過去10年の事象を基に、次の1年を予測することは可能であろうか。VUCA時代の事象に呼応するように多様な分野で理想が掲げられ、それを実現するための理論が生み出される。そして、その理論を具現化するために開発された技術が創り出す新たな可能性は、世界中の人々の選択と行動に多大な影響を及ぼしている。同時に、過度な国際化と技術革新を突き進む中で、もたらされる急速な変化から取り残されている人々が存在する。

 私が信じる「明るい豊かな社会」とは、成熟と革新が融合した社会である。心安らかに成熟を享受しながら、急速に変化する時代に希望を持ち革新を求める人々が、自分の人生を生きる社会である。成熟とは過去から引き継がれた今在るものによってもたらされる安心の象徴であり、安寧と心の調和をもたらす。革新とは未来に向けてより良く在るために必要な成長の象徴であり、希望と心の高揚をもたらす。そのどちらも尊い。後世に残すべきものを見極め次代に引き継ぐことは、ただひたすらに革新を追求することにより達成できるだろうか。これから起こり得る予測不能な世界の変化に対応する力は、成熟に安堵することにより身につけ得るだろうか。成熟と革新のどちらもが融合する社会では、人々は過去を尊び心に安らぎを感じると同時に未来に可能性を見る。そのような社会を実現するために、外的要因に過度に影響されることなく自らが決意をもって自身の選択をし、行動することによって周囲の人々に対し前向きな変化を促す。そして、成熟と革新が融合した社会を実現することにより、時代に取り残される人々を存在させない社会の持続可能性を確立する。

 ひとは生きるだけであれば一人でも可能である。しかし、自分以外の誰かがいなければ真に豊かな人生を送ることはできない。このことを私に教えてくれたのは盛岡青年会議所である。盛岡青年会議所の先人たちは、限りある時間の中で住み暮らすもりおかのあるべき姿を志向し、一人では達成できないことを実現するために、ひとの輪を紡ぎ、協働し、困難を乗り越え互いに成長を促し、共に喜び、その縁を未来につないできた。そしてそれはどんな時代にあっても青年会議所、不変の存在意義である。青年会議所は、時代に先駆け行動を起こし続けるため新陳代謝と温故知新を高い次元で融合させる稀有な団体である。蓄積された知見に新しい発想を加えながら社会にインパクトを提供し続けることができるのは、40歳で卒業し新たな世代にその使命を託す青年会議所だからこそ生み出せる価値である。盛岡青年会議所は地域に根差す市民意識変革運動を推進する団体として、青年会議所が独自に持つ価値を基礎に職種、役割、性別にとらわれない様々な視座から新たなインパクトと多様なひとのつながりをもりおかに提供することができる。

 私はもりおかの清らかさが心から好きだ。澄み渡る青空の下、雪解けとともに草木が芽吹き新緑の山々にこだまするように太鼓の音が聞こえる。黄金色の田園に実りを感じ、無限と思えるほどに降り積もる雪が白銀に光輝く。このもりおかでは、川のせせらぎのようにゆっくりと時間が流れ、心安らかな生活を送ることができる。そして、この環境によって育まれる人々の穏やかさを心から誇りに思う。先人たちは時代と真剣に向き合い行動することでより良い社会を実現し、現在私たちはその結果である今このもりおかに生きている。ただひたすらに変化を求めたのではなく、後世に残すべきものを真剣に考えそれを守るために必要な変化を選んできた。だからこそ、まず私たち青年経済人が急速な時代変化に取り残される人々になってはいけない。過去を重んじ成熟によってもたらされた後世につなぐべきものを見極め、より良いもりおかのための革新という成長を求める人間でなければならない。自らのまちは自らが創る。その決意をもってより良い選択をするために必要なものを学び、行動を通して成長を求める人間であろう。私たちは成熟と革新が融合する社会を実現し、そして、自分自身がもりおかに住み暮らす人々の笑顔の理由となるのだ。

成熟社会における革新の意義を知る

 新たな発想が生みだされ革新技術がそれを実現した時、ひとは世界の成長を実感する。eコマースに代表される仮想空間における流通が成熟した次は、まだこの世に存在しない商品やサービスのコンセプトと存在意義を提示し、賛同者から資金を集め社会に届けるクラウドファンディングが現れ日々新しいプロジェクトが世界に向けて発信されている。金融経済においては既に人工知能(AI)や機械学習により資本主義における世界のパワーバランスの再構築が始まっている。伝統工芸、伝統芸能の世界でも新たな着想と最新技術を融合し付加価値を提供する人々が存在する。現時点でも高度な次元で便利な時代であるにも関わらず、新たな思想の出現とそれに伴う革新は止まらない。そしてその新たな思想とそれを具現化する技術を、知らない、では済まされない。世界の最先端を学ぶことは、後世に残すべき本当に価値あるものを浮き彫りにする。私たちは今世界で何が起きているかを知り、より良い未来のために選択し、そして行動することが求められている。その行動を通して今の社会における革新の意義を知り、もりおかの人々に提示する。

もりおかの象徴に新たな価値を提供し、まちの革新を実現する

 本年42回目の開催を迎える盛岡さんさ踊りは、成熟したもりおかの象徴である。第1回目は参加者1,500人、観客15万人からスタートし、現在では参加者3万5,000人、観客130万人を誇る大きな祭りへと成長した。規模を拡大しながら、多くの人々が関わり、その運営を支え、開催を心待ちにしている。盛岡青年会議所は主催団体の一つとして、「市民総参加」「来て、観て、魅せられ、加わるさんさ」というテーマの体現に大きな役割を果たしてきた。だからこそ私たちは、人々が安心して参加できる成熟したまちの象徴である盛岡さんさ踊りに観光産業そして地域経済への波及効果の視点から新たな価値を提供し、これからも永きに亘りさらに愛されるもりおかの文化への革新に挑戦する。挑戦の道程では、先人たちが残そうとした大切なものを知ることが必要不可欠である。その挑戦のために、今のもりおかの現状とこれからの未来像を市民と共に考え具体化し行政に提言する機会を創造する。

課題設定力を身につけ、コレクティブインパクトで成果を上げる組織を目指す

 青年会議所は社会課題の解決において重要な役割を担っており、まちの課題に対し様々な視座から真摯に向き合い続けることができる人々の集合体である。まずは基礎として現状を知り論理的且つ的確に課題設定をする力が必要である。そしてVUCA時代では、課題設定後もそもそも解決すべきは本当にその課題なのか多様な視座と視点から考え続けることが求められている。課題を発見するためのツールが溢れ成熟した多くの分野で革新が求められる今日において、潜在的な課題を発見することで新たな需要を創造し革新を体現する事例が存在しており、外部から学べる事が多くある。問題の所在はどこにあるかを考え、問題解消のための課題設定力を高めることは意思決定を求められる立場の人間の付加価値を向上させることにつながる。精度が高くより深い信頼性と強い影響力を持った意思決定を行うという付加価値を身につけた人々の集団に成長し、コレクティブインパクトで成果を上げる組織を目指す。

人間性とは何かを追求し、 次世代の育成を通してまちの発展に寄与する

 あらゆる分野の仕事がAIに代表される人間ではない何かに置き代わろうとしている。人間ではない何かが人間を代替する社会が進む中で必要とされる人間性とは何か。膨大なデータを記憶し、膨大な情報から未来を予測する力において既に人間の限界を超えている。そのような時代だからこそ人間が人間である真価として発揮すべきは論理に情熱を乗せることである。そのことは若い世代にこそ、自らの経験を通して体感し理解してほしい。次世代を担う少年少女はこのまちの宝であり、彼らの成長はまちの成長と同義であるからだ。そして健全な人間性を育成する機会を提供するのは私たち世代の責務である。厳しくも可能性に溢れた未来を生きる少年少女にとって必要な、論理的に自分で考える力と実行し継続する情熱を胸に携える機会を提供する。そして成熟と革新が融合した社会における人間性とは何かを少年少女たち自らが見出しリバースエデュケーションの起因とする。

国際社会の現状を研究し、恒久的世界平和を実現する未来へ向けた行動起こす

 近年、過度なグローバリズムによる歪みに反応するように世界各地でナショナリズムを体現する動きが沸き起こった。過去への回帰なのか、新たな思想としてのナショナリズムなのかは今後の世界情勢を見極めなければならないが、少なくともグローバリズムが唯一の解でないことは提示された。そのような不安定な国際社会にあっても、私たちは盛岡青年会議所に所属する限り恒久的世界平和の実現を求める。本年、羅東國際青年商會との姉妹締結が50年を経て新たな一歩を踏み出す。もりおかに住み暮らす私たちにとって羅東國際青年商會との信頼と友情は、民間外交を通して両地域間の理解を互いに深めることができ、世界平和へ貢献するための身近且つ重要な機会である。50年を経て成熟期に入った羅東國際青年商會との関係を革新させるため共同事業を実施する。そして50年で培った民間外交の経験を基礎に、これからの時代を生きるためには鋭い国際感覚が必須であることをもりおかの人々へお伝えする。

市民意識変革運動を実現する組織ブランディグに挑戦する

 青年会議所の運動は市民意識変革運動と呼ばれる。故に、青年会議所にとってのブランディングとは事業を通して市民からの共感や信頼を得ることが本質である。しかし、私たちの運動は市民に届いて初めてその真価が問われるため情報の届け方は重要な役割を担っている。情報の伝達手法とその過程は刻一刻と変化している。私たちが定義する青年会議所の価値と、価値に基づいた行動は他者にどう映るのか。私たちの運動を誰に届けたいのかを明確に定め、盛岡青年会議所の生き生きとした活動の情報を提供し運動発信の一助とする。そのために、会議体毎の工夫と努力に託すだけでなく盛岡青年会議所の運動を届ける体系的な広報手法を確立し、組織ブランディングに寄与することによってもりおかにおけるプレゼンスを向上させる。また、組織ブランディングである以上会員拡大および所属会員の意識向上を促さなければならない。最新のマーケティング手法を研究、活用し、組織目的に沿った盛岡青年会議所独自のブランディングに挑戦する。

公開討論会プロジェクトチーム

 本年は2015年に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから初めての盛岡市長選挙が予定されている。青年会議所はこれまでも公開討論会を開催し、公平中立の立場で候補者の政策を有権者へ届ける機会を創出してきた。本年はこれまでの公開討論会開催のノウハウを集結させ、初めて投票する10代へのアプローチ手法を議論し実践するためのプロジェクトチームを設置する。また、現在のまちにとって必要な討論が行われるよう市民の論点を集約した上で行政課題を抽出し有権者にとって有益な公開討論会を開催する。

盛岡青年会議所革新特別委員会

 盛岡青年会議所にとって、委員会の枠を超えた特別委員会が果たしてきた役割は大きい。法人格移行後も、定款を始めとする諸規程改正や盛岡JC組織ビジョン策定など改善と向上を目指し一定の成果を上げている。まさに成熟を重んじながら革新を求める組織の中心を担ってきた。特別委員会の本質的価値は、経験豊かな会員がその知識と知見を基礎に、新しい会員の視座を尊重しながらこれからの盛岡青年会議所を議論し、選択し、実行に移すことができる存在であることだ。本年度は、一般社団法人として迷いのない予算執行および決算を行うために、会計基準、規程とその運用を中心に議論する。そして、50年に亘って民間外交を続けてきた羅東國際青年商會との姉妹青年会議所交流の価値を世界へ発信するため、国際青年会議所が所管する褒賞への申請を担う。

青年会議所とは機会である。
時には不可能と思う困難に立ち向かわなければならない。
しかし、自分のみがその困難に機会という意味を与え、
周囲の力を借り、挑戦し、成長できる。
成長と革新が融合する社会へ向けて、
そしてその笑顔の理由になるために。

 

“Impossible is just an Opinion.” 不可能とは、つまり意見である。 Paulo Coelho

Share / Subscribe
Facebook Likes

盛岡青年会議所について