一般社団法人盛岡青年会議所

理事長所信2023

一般社団法人盛岡青年会議所 2023年度理事長 小野寺 数馬
2023年度理事長 小野寺 数馬
Onodera Kazuma

笑顔の起点になる
〜今と未来を生きる子供たちのために〜

 私が23歳の時に父が病に倒れ事業を継ぎ、今では、私を支えてくれる信頼できる仲間が増えた。私が30歳の時にふたりの女の子の父となり、私の活力の源である家族ができた。仲間と家族の存在は、私の人生に多大な影響を与えている。仲間の存在は、共に成長する喜びを教え、日本で一番ひとが育ち社会に無くてはならない会社にするという目標を与えた。家族の存在は、父としての親心が何たるかと男としての品格を教え、私の命が尽きた後でも家族に笑顔であり続けてもらいたいという夢を与えた。仲間、そして家族は、この先何があろうと一番大切な存在である。夢の実現に向けて行動することで目的と目標がより鮮明になり使命となる。さらに、夢に期限を定めることで覚悟が決まる。今を生きるということは、限りある人生を使うことである。人生を何のために使うのか、誰のために使うのかを自分自身に問い、その答えを導き出した時こそ、魂は激しくも美しく燃え上がる。私は、仲間と家族に対する想いと同じように身近なひとを笑顔にする輪を拡げ、全てのひとの笑顔のために人生を使いたい。

 人類は、まるで無限とも感じられる母なる地球の恩恵を享受し、生かされてきた。そして、文化を創造し文明が発達することにより、経済が成長し社会を発展させてきた。現在、世界の人口は増え続けている。人類が無限と誤解していた地球資源が、枯渇する時期を迎えるのは遠い未来の話ではない。利己的理由で利便性を追求した人間活動は、地球規模の気候変動を起因とする様々な事象を引き起こし、それらは複雑に絡み合い、人間社会だけではなく地球上のあらゆる生態系に影響を及ぼしている。欧州を中心に、SDGs達成度上位国では、自分自身に気候変動の影響が直接的にないとしても、地球規模の環境危機を当事者として考え行動するひとが多くいる。なぜなら、気候変動を起こす活動をあまりしていない人々が、その悪影響を受けるという不平等な現実についての理解が浸透しているからだ。日本では環境危機についての意識が、先進国の中で最も希薄で行動力も乏しい。それに加え、当事者意識はあるが、個人的に何か行動しようと思うひとが減少傾向にある。これは、世の中のどこかで起きている無関係な話ではなく、もりお かにおいても同じことが言える。だからこそ今、人間社会の在り方が問われている。問題を解決するために、まずは私たち一人ひとりの意識を変え、地球環境に配慮したライフスタイルへの転換が求められている。一人ひとりの行動が、ひとを変え、地域を変え、国を変え、やがて世の中全体を変える力となる。

 もりおかは、広大な自然環境があり独自の文化と伝統が根付き、歴史がひとを育て、まちを発展させてきた。人々の生活を支えている北上川には、春の清らかな雪解け水が流れる雫石川と中津川が混ざり合い、夏は鮎が踊り秋は鮭が戻り、白鳥の飛来が冬の到来を感じさせる。未来に生きる人々も、同じように四季の移ろいを感じることができているのだろうか。もりおかには、大小さまざまな河川があり、古くから人々の暮らしと深く結びつき息づいている。まちは、城下町を中心に交通網と経済が発展し、情緒と風格ある歴史的建造物が生活と馴染み、現代的な街並みが広がる。祭りや伝統工芸は、歴史的な価値やものの良さが現代に受け継がれ、時代に適応しながら今なお愛されている。自然と都市、伝統と利便、情緒と機能が融合したもりおかには、和の精神が息づき分かち合いの気持ちや思いやり、もてなしの心が厚く、ひととの絆を 大切にする人々が多く住み暮らしている。私は、穏やかに時が流れ、どこか長閑なもりおかが大好きだ。環境・社会・経済の側面が複雑に関わり合う現代において、もりおかをより良くするためには、社会経済活動に環境配慮が織り込まれる必要がある。それに加えて、地域特性に合わせたまちづくりが不可欠だ。地域の社会経済活動は、地域条件・自然資源・人文資源・特産的資源・中間生産物などの地域資源の上に成立している。もりおかが持続可能であるためには、社会経済活動によってこれらの地域資源が損なわれないようにしなければならない。

 私が信じる「明るい豊かな社会」とは、自然とひとが共生できる社会である。自然とひとが共生する社会の実現とは、自然環境の再生への道筋を考え、地域資源の恩恵を将来にわたって享受できる地域循環共生圏(ローカルSDGs)の構築を意味する。地域循環共生圏は、サイバー空間とフィジカル空間の融合により、地域から自然とひとのポテンシャルを引き出す生命系システムである。これは、地域資源を最大限活用しながらも環境が損なわれないよう経済を回して社会課題を統合的に解決することを目指している。つまりは、地域循環共生圏の構築は、Society5.0とSDGsの達成を一体で推進させる道筋である。SDGsの達成に向けた行動の10年に入ってから4年目を迎え、人類が地球への責務を果たす日が差し迫っている。私たちは自然とひとが共生できる社会を実現し、そして今と未来に生きる子供たちの笑顔を守るのだ。

 新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、世の中と私自身の在り方を考える機会となった。何をすべきかが明確となり、これからは私自身がまちづくりの起点になろうと決意し、盛岡青年会議所に入会した。盛岡青年会議所は、自らが機会を掴み取ることによって得られる発展と成長、そして志が高く、尊敬と憧れを抱くことができる同世代の仲間を私に与えた。先輩たちは、40歳までの限りある活動期間で、時代に先駆け、もりおかのありたい理想の未来を描き、一人では成し得ないことに対し、共感を呼び協働し、苦楽を共にして喜びを分かち合い、次を担うひとへ期待と希望を託してきた。私たちは、多種多様な視点で市民意識変革運動を推進する唯一無二の団体である。世の中の残酷さや苦しみなどから生まれる怒りと哀しみと向き合い、それでも光を信じ果敢に挑戦する姿はひとの心を打つ。自らが志を高く、揺るぎない信念と意思の強さで得ようとする覚悟が己を突き動かし、自然に注目を集め共感され求心力を高める。同じ志をもつ仲間が増えることは事を成し得る始まりである。大きな夢をもち、仲間と英知を出し合い切磋琢磨しながら成長し、喜びや痛みを分かち合うことによって笑顔が生まれる。その仲間の存在が、現状に甘んじる弱き心に自制と自律による強い意志と奮い立たせる勇気を与え、夢の実現を加速させる。ひとは事が進むにつれ期待と希望を抱き、一丸となり幾度となく壁を乗り越える姿に影響され、事を成し喜びを分かち合いたいと熱い情熱をもつ新たな仲間となる。苦境に立たされた時には、歩みを振り返り、ありたい理想の未来を語り、今に意味を見出す。ひとが辿った道で得た経験を自己開示することによって、これから同じ道を辿るひとの力となり、歴史となる。このまちを創造し未来に託すのは他の誰でもない自分自身である。明るい豊かな社会の実現に向けて歩み始めよう。私たちは、笑顔の起点となるのだ。

【もりおかへ市民の声を届けることにより共感を呼び協働する】

 地域資源を最大限活用することは、ひとの生活の質や事業の高付加価値化に結びつき、市民のシビックプライドを高める。高付加価値化とは、今あるまちの魅力や強みをよく理解し、その価値を高めることだ。豊かな自然とひとの生活が調和するまちに魅力を感じ、歩いて楽しいまち、交通が便利なまちであり続けて欲しいという市民からの意見は多い。豊かな自然環境を保全しつつ雇用を創出し、理想を形にすることによってまちに持続可能性を生み出す。Society5.0は、生活や産業の在り方を大きく変化させ、経済発展と社会的課題の解決、そして自然との共生を可能にする。同時にSDGsの達成に貢献することから、変革の方向は軌を一にしている。子供の笑顔を守るためには、まちそのものを高付加価値化させ、将来世代に引き継いでいくことが最重要である。観光資源の一つであるスポーツ産業における持続可能な多機能複合型交流施設を軸としたまちづくりは、日本だけでなく世界で浸透し、様々な事業が展開されている。観光資源の活性化は、関係人口を増やし周辺産業を潤す。また、施設を中心とした様々なコミュニティが形成され、地域経済発展のきっかけとなる。子供が笑顔であることを見据えたまちづくりを意識し、市民と共にありたい理想のまちを描き、もりおかへ市民の声を届けることにより共感を呼び協働する。

【国際的な視野を身に付け地域から社会全体をより良くするために市民の意識を変革する】

 世界経済は急速な発展を遂げる一方、過熱する経済競争により環境が破壊され、不当待遇・児童労働などの様々な事象を引き起こし、環境・社会・経済側面と連動することによって複雑性を増している。環境側面は世の中の成り立ちの基盤であり、環境危機へのアプローチは喫緊の課題である。既に各国で様々な取り決めや施策が実施され、企業ごとに対策が講じられている。投資家は企業の利益のみではなく環境保全に対する配慮や取り組み、社会全体が長期的に発展をするための貢献度を重視し、持続可能な世界の実現に向けて取り組む企業へ投資をしている。私たちがやるべきことは、地域から社会全体をより良くしていくグローカリゼーションの意識をもち、世界中の企業の先進的な取り組みを学び、社会経済活動に落としこむことだ。また、本年55年目を迎える羅東國際青年商會との姉妹JC交流は国境を越えた友情と信頼を紡ぎ、両国民の生活向上に明るい未来をもたらす努力を積み重ねてきた。これまで国際的な視野を養ってきた盛岡青年会議所だからこそ、これからも民間外交の先頭に立ち続けることができる。地域で社会経済活動を行う私たちは、複雑に絡み合う様々な事象を引き起こしている問題に対する危機意識をもち、国際的な視野を身に付け地域から社会全体をより良くするために市民の意識を変革する。

【地球規模で活躍できる人材の育成に寄与する】

 地域・家庭環境と教育成果の相関性は、いつの時代においても確認されており、社会全体が平均的に高学歴化してきた現代にも存在する。機会の不平等による教育格差は、子供の将来の選択肢に影響を及ぼしており、社会全体で解決すべき課題の一つとなっている。大人には、未来ある子供に自らの可能性と学ぶことへの興味を生み出す機会を提供する責務がある。大人がいくつになっても学び成長しようとする姿勢は、子供に夢を与え、教育環境に良い影響を及ぼすことができる。子供は、地域だけに固執せず世界のあらゆる課題を解決するための働き方や生き方を学ぶことによって、無限大に視野を広げることができ、壮大な夢を描くことができる。夢を叶えるために頑張る子供の姿勢は、無限の可能性を秘め、多くのひとに希望をもたらす。子供が夢を本気で追うには、自らの内に秘める可能性を見つけることが重要となる。子供は、まちに持続可能性を見出すことができるかけがえのない存在である。大人と子供、どちらも学び成長し続ける姿勢が好循環を生み出し、あらゆる課題解決の糸口となり得る。私たちは、市民が年齢にかかわらず自分の夢を叶えるために、一生懸命に目の前のことに挑戦し、可能性を広げる能動的スタイルの確立を促す。そして、地球規模で活躍できる人材の育成に寄与する。

【会員の相互理解を深め、成果を上げるより良い組織に変革する】

 盛岡青年会議所は近年、組織の変革の時期を迎えている。伝統を継承し、より良く発展させなければならない。伝統や過去の実績、既存の風土、経験や慣習が根底にあり、それらを無視して変革することはできない。培われてきた伝統は、盛岡青年会議所を象徴するものである。その価値を損なわないまま、今の時代に即した魅力的な変化をし、輝かせることが変革である。そして、それらの魅力は、市民へと伝わり共感され、大きな運動へと発展する。加えて、私たちはダイバーシティ&インクルージョンを理解し、共にもりおかの未来を切り拓く仲間に様々なバックグラウンドがあることを受け入れ、互いに歩み寄りながら成果を上げる組織を築いていくことが求められている。また、なぜ青年会議所活動をしているのかを会員が自分自身に問い、自分の人生と青年会議所活動の繋がりを理解することによって青年会議所から得られる発展と成長の機会に貪欲になる。そして、私たちの活動に理解を示し支えてくれている仲間や家族へ感謝をするとともに、互いに尊重し合える環境を創出し、思いやりの心をもち身近なひとの笑顔を守ることが大切である。私たちが市民の笑顔の起点となるためには、私たち自身が活動を楽しむことも重要である。私たちは、会員の相互理解を深め、成果を上げるより良い組織に変革する。

【盛岡青年会議所ブランドを高め、市民に意識変革運動を拡げる】

 ブランドとは、関わる全てのひとに対する約束である。ブランディングとは、盛岡青年会議所の活動に対する共感や信頼など、関わる全てのひとに必要とされる価値を高めることである。現在、盛岡青年会議所は会員の新陳代謝の速度が速くなっている。そのため、青年会議所活動がもたらす様々な機会に対して、会員の認識が希薄となってきている。一人ひとりの行動は、ホームページやSNS、広報誌以上にまちに強烈な印象を与えるからこそ、組織としてインナーブランディングを強化する。また、組織のポテンシャルを高めるには、会員に基本的な理念・綱領・使命・価値観へ共感してもらうことが重要である。組織に対する誇りと愛着を深め、目的意識を高め、活動意欲を引き出すことによって、行動に対する結果が大きく変わる。会員の能動的行動を促し、一人ひとりの影響力と発信力を高める。そして、明るい豊かな社会の実現に向 け突き進む姿が市民に広く知られることは、組織の社会的信用を高めることになる。より多くの市民の共感を生み、大きな運動へ発展させるため、アウターブランディングも強化する。そのために、効果的な情報発信の仕方や対象者を明確にする方法を確立し、戦略的なブランディングを実施する。一人ひとりの心に届く情報を発信し、盛岡青年会議所ブランドを高め、市民に意識変革運動を拡げる。

組織拡大特別委員会
 盛岡青年会議所がこの先も一丸となるためには、多様性を享受し人間力を高め合うことが求められている。そして、より良い組織に変革し続けるには、新たな仲間の力が必要だ。未来を担う仲間の輪を拡げることは、まちにより必要とされる盛岡青年会議所ブランドを確立することを加速させる。一人でも多くの市民の共感を生み、活動することによって得られる発展と成長の機会を認識した会員を拡大する。また、何のために活動するのか、なぜ活動する必要があるのかを定期的に情報発信する場を設け、青年会議所の理念に共感する会員を増やしていく。

公開討論会プロジェクトチーム
 本年は、盛岡市長選挙が予定されている。盛岡青年会議所は、これまでも公開討論会を開催し、公平中立の立場で候補者の政策やビジョンを有権者に届ける機会を創出してきた。公開討論会は、市民がまちの未来を考える機会となり、自らが愛し住み暮らすまちの魅力や様々な問題について一層深く知ることができる。統一された条件下で候補者の意見を聴くことができる場を作り、一人でも多くの市民に有益且つ的確な情報を提供する。

人生を何のために使うべきか。誰のために使うべきか。
夢をもち生きることが、人生に意義を見出す。
夢は目的と目標を与え使命となり、期限を定めることにより、覚悟が決まる。
      「世に生を得るは事を成すにあり」  
      -竜馬がゆく-司馬遼太郎著(六巻p264一文)
 
 

MORIOKA 2023 笑顔の起点になる 〜今と未来を生きる子供たちのために〜
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